枝廣淳子

枝廣淳子コラム 地球の未来を考える

プロフィール/枝廣淳子(えだひろじゅんこ)

環境ジャーナリスト・翻訳家、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する翻訳、執筆、講演、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。

  • 第1回 2015年12月
  • 第2回 2016年3月
  • 第3回 2016年8月
  • 第4回 2016年11月
  • 第5回 2017年2月
  • 第6回 2017年4月
  • 第7回 2017年11月
  • 第8回 2017年12月
  • 第9回 2018年2月
  • 第10回 2018年3月

加速する「脱石炭」の動き

パリ協定のおさらい

パリ協定については、第2回のコラムで詳しく説明していますが、簡単におさらいをしておきましょう。
2015年12月に成立し、2016年11月にはスピード発効したパリ協定。パリ協定の大きな特徴は3つあります。(1)途上国も含め、世界全体が取り組む枠組みをつくったこと、(2)気温上昇を2℃よりも低く抑えるという厳しいが必要と考えられている目標を掲げていること、(3)そのために今世紀後半には温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を明示していること、です。これらの特徴からわかるように、パリ協定は国際社会が温暖化に対して取り組む上で画期的なマイルストーンとなっています。
一方で、パリ協定には課題もあります。(1)各国の自主目標であること、(2)目標を出すことは義務づけられているものの、目標の達成義務や罰則はないこと、(3)現在の各国の目標では足りないこと、が挙げられます。つまり、世界各国が参加できる「枠組み」としてはよいスタートを切りましたが、中身はこれからしっかり精査し、実効性につなげていかなくてはならない、と言えるでしょう。

トランプ政権誕生の影響は?

米国でのトランプ政権の誕生がパリ協定にどのような影響を及ぼすか?」という質問をよくいただきますが、「まだわかりません」というのが正直なところです。
トランプ氏は大統領選期間中、「人間の活動によって気候変動が引き起こされたというのはペテンでありでっち上げだ」と語り、「パリ協定から米国を撤退させる」と力説していました。
トランプ氏は、就任後はパリ協定については現在までのところ何も発言していません。しかし、大統領就任直後に、オバマ政権が地球温暖化対策として導入した「気候行動計画」を撤廃し、石油や天然ガスなど化石燃料の使用を増やすと表明しています。先述したように、パリ協定の枠組みでは、未達成でも罰則がないので、パリ協定からわざわざ離脱しなくても、無視するという考え方もありそうです。
他方、世界的には“脱炭素”が新しい技術開発や市場形成の源泉になりつつあります。純粋に米国産業の国際競争力を考えても、全く無視することもできない・得策ではないとも考えられます。パリ協定が「単なる地球の未来を守るための取り決め」なのか、それとも「次の国際競争力を決する土俵」と位置づけられるのか、それ次第でトランプ政権のパリ協定の扱いが変わるのではないか、と私は考えています。

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