93億-51億トン=42億トン!

では、温暖化の進行を止めるにはどうしたらよいのでしょうか? いまでは小学生でも高学年になれば、「温室効果ガスを減らすこと!」「特に、二酸化炭素(CO2)!」と答えてくれます。そう、そのとおりです。ではどれぐらい減らせばよいのでしょうか?
 直感的な答えは、「地球が吸収できるレベルまで減らす」ということですよね! 地球にはCO2を吸収する力があります。何がCO2を吸収しているでしょうか? そう、植物です。植物は二酸化炭素を吸収して酸素を出しています。草や木、森林があればあるほど、大気中からCO2を吸収してくれるのです。
私は子どもたちに温暖化について教えるとき、「森林は空の掃除機なんだよ。空の二酸化炭素を吸い取ってくれるんだよ」と説明します。
そして、森林のほかに、海洋もCO2を吸収しています(正確に言えば、大気中と海洋中のCO2濃度の差によって、大気中から海洋中にCO2が移動しているのです)。
世界中の温暖化に関する研究者の集まりであるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告によると、森林や海洋など、地球には毎年51億トンの炭素(C)を吸収する力があります。ところが、私たち人間が、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を燃焼して大気中に排出している炭素は93億トンです。
つまり、「93億-51億トン=42億トン」の炭素が毎年吸収されずに大気に残ってしまい、溜まっていきます。これが温室効果をもたらし、温暖化を引き起こしているのです。「93億-51億トン=42億トン」を変えなくてはいけないのです!

「93億-51億トン=42億トン」を変えるための2つの働きかけ

どうやって、「93億-51億トン=42億トン」を変えればよいのでしょうか?2つのアプローチがありますよね。
1つは、「93億トン」―私たち人間の化石燃料を燃やすことによる排出量―を減らすことです。ピュー研究所の調査でも、多くの市民が「自分の国は、石炭・天然ガス・石油の燃焼による温室効果ガスの排出量を制限すべき」と考えていることがわかりましたが、これはまさにこの「93億トン」を減らそう!という動きです。
そして、もう1つのアプローチは、「51億トン」―森林などの地球の吸収量―を増やすことです。「93億」を減らせば減らすほど、そして、「51億」を増やせば増やすほど、その差は小さくなります。その差がゼロになれば(実際には、大気中のCO2濃度が減れば海洋の吸収量も減るので、直線的にゼロになるわけではありませんが)、温暖化の進行は止まる!ということになります。
「人間の排出量を減らすこと」と「地球の吸収量を増やすこと」の2つのアプローチを同時に進めていかなくてはなりません。たとえ、排出量をがんばって減らしても、一方で、森林伐採などが進んで、地球の吸収量が減ってしまっては、やはり温暖化は進んでしまうからです。

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