「温暖化は自分の生きている間にも害を及ぼす」

世界全体では、およそ10人中8人が「人々は、いま現在気候変動の影響を受けているか、今後数年の間に影響を受けるだろう」と述べています。最も不安を感じているのは、ラテンアメリカの人々です。77%が「現在、気候変動は人々に害を与えている」としており、ブラジルではその割合が90%に達しています。ブラジルでは温暖化の影響がかなり顕在化しているのでしょう。
アフリカでも、「気候変動は、現在人々に害を与えているか、今後数年のうちに害を与えるだろう」とする人々の割合は86%と、多くの人が差し迫った脅威を感じています。他方、ヨーロッパでは、「現在、気候変動は人々に負の影響を与えている」と答えたのは60%です。
そして、最も楽観的(?)なのが米国でした。米国人は「気候変動の影響は遠い先の話だ」と考える傾向があり、「気候変動はすでに世界の人々に害を与えている」とする人の割合は41%しかなく、一方で、「今後何年も人々に害は及ぼさないか、決して及ぼさない」とする人が29%もいるのにはびっくりです!

日本では関心が低下?

ピュー研究所では、今回の調査と5年前の調査の結果を比べたところ、「ほとんどの場合、ここ5年間でこの問題に対する見方に変化は見られない」としています。全般的には変化はないのですが、しかし、「いくつかの主要国では、気候変動に対する関心が大きく低下している」のです。
たとえば、世界最大のCO2排出国である中国では、「気候変動は非常に重大な問題だ」と答えた人の割合が2010年から23%減少しており、韓国でも20%減っています。そして、日本でも13%減となっているのです。
私も講演活動などをしていて、特に3.11以後、日本では「温暖化どころではない」「経済成長が最優先だ」という風潮が強く、温暖化問題が社会的に“後回し”になっているように感じています。日本は低炭素技術などにより世界をリードする役割を期待されています。日本の強みを生かした経済成長のあり方を考える意味でも、より多くの企業や人々に温暖化への関心を高めて欲しいと願っています。

世界の人々が求める「国際協定」

先ほど述べたように、世界全体で、気候変動は「非常に」深刻な問題であると考える人は54%ですが、「自分の国が、石炭・天然ガス・石油の燃焼による温室効果ガスの排出量を制限する国際協定に調印することを支持する」とした人の割合はそれよりはるかに高く、78%でした。つまり、「非常に深刻」までは思っていなくても、自分の国は温室効果ガスの排出を制限する国際協定を結ぶべき」と考えている人が多いのですね。
この違いが最も顕著な国は中国で、その割合は18%と71%だったとのこと。つまり、中国の人々は、地球温暖化に強い懸念を抱いていないにも関わらず、中国政府の地球温暖化への取り組みは支持している、ということです。
実は日本でも同じ傾向が見られます。排出量制限に対する一般市民の積極的な支持は、気候変動への懸念よりも38%も上回っているのです。非常に深刻だと思っているかどうかに関わらず、「排出量を制限すべき」と多くの市民が考えていることは心強いですし、世界のこの傾向はCOPなどの国際交渉の担当者にとって追い風となるでしょう。

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