枝廣淳子

枝廣淳子コラム 地球の未来を考える

プロフィール/枝廣淳子(えだひろじゅんこ)

環境ジャーナリスト・翻訳家、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する翻訳、執筆、講演、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。

  • 第1回 2015年12月
  • 第2回 2016年3月
  • 第3回 2016年8月
  • 第4回 2016年11月

加速する「脱石炭」の動き

パリ協定、スピード発効!その意味するところ

第2回のコラムにも書いたように、昨年12月に、パリで開催された気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)では、京都議定書以来18年ぶりに、先進国も途上国も含め、世界全体がまとまり、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」が締結されました。
それから1年もたたないうちに、EUの「一括批准」という異例のプロセスなどにも後押しされ、10月5日にパリ協定の発効要件が満たされ、11月4日の発効が決まりました。これまでにないスピード発効!です。
パリ協定は、途上国も含め、世界全体が取り組む枠組みです。気温上昇を2℃より低く抑えるという目標達成のために「今世紀後半には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」ことが定められました。その意味するところは、石炭との決別です。

世界中で石炭消費量は減少へ

世界では、パリ協定を待つことなく、すでに「脱石炭化」が進行していました。ドイツはすでに石炭消費量を半減し、英国・フランスは7割削減しています。世界第2位の石炭消費国である米国でも、第1位の中国でも石炭消費量は減り始めているのです。
米国では、2010年初めの時点で稼働していた500超の石炭発電所のうち、180カ所以上がすでに閉鎖されたか、閉鎖予定で、すでに2007年から2013年までの間に石炭使用量は18%減っています。

米国の環境分野のオピニオンリーダーのレスター・ブラウン氏は、石炭火力減少の主な理由として以下の4点を挙げています。

  • (1)石炭に対する火力発電所周辺の地元の反対(健康や環境が理由である場合が多い)
  • (2)石炭火力発電による電力の価格を上昇させる厳しい大気質基準の適用
  • (3)ソーラー・風力エネルギーの利用増
  • (4)低コストの天然ガスの急速な利用拡大

米国では、火力発電所周辺の地元やNGOの石炭反対運動により新規の石炭火力はほぼ成立しなくなっており、上記のように、既存の石炭火力も閉鎖の方向に向かっています。その大きな原動力となっているのが、「2030年までに国内の石炭発電所をすべて閉鎖」をめざして全国規模で活動を展開しているシエラクラブの「脱石炭キャンペーン」です。
240万人の会員・支援者を擁する環境保護団体・シエラクラブは、石炭ブームを呼び起こしたブッシュ政権の2001年エネルギー計画発表以来、脱石炭キャンペーン活動を活発に展開してきました。2011年7月には、ニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ市長が脱石炭キャンペーンに5000万ドルの寄付を発表し、世界中に大きな影響を与えました。
シエラクラブは、石炭火力発電所を閉鎖させるだけではなく、地域社会と力を合わせて、省エネを進め、風力やソーラー、地熱からのクリーンな電力で石炭火力の電力を置き換える活動も展開しています。たとえば、ロサンゼルスでは、地元の電力事業者や他の団体と力をあわせて、低所得者層の家計を守りながら脱石炭を進める計画を策定。2013年3月、アントニオ・ビヤライゴーサ市長が「ロサンゼルス市は2025年までに石炭ゼロの市になる」と宣言しています。

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