それでも世界は低炭素・再エネの社会への移行を止めない

しかし、トランプ政権の動きにかかわらず世界は低炭素・再エネの社会へ移行します。そう私が強く信じるのは、低炭素・再エネの社会への移行の原動力が、単なる温暖化対策だけではないからです。トランプ政権は「自国の国家安全保障の最重要視すること」の象徴とも言えそうですが、本当に各国が「自国の国家安全保障の最重要視すること」をすれば、エネルギーで言えば、自国内・地域にあるエネルギー(多くの地域にとっては再エネ)を最大限に活用するということになるでしょう。海面上昇や洪水・干ばつといった気候変動の悪影響が顕在化するにつれ、「国家安全保障」とは他国という仮想敵に対して軍備を増強することではなく、まさに足元をしっかり安定させることだということがわかってくるでしょう。
前回は、パリ協定の目標達成に向けて、ひいては気候変動の進行を止めるための各国の取り組みとして、「炭素に価格をつける」という政策が多くの国に広がっていることをお伝えしました。この政策の後押しもあり、また、この政策がない国・地域でも、世界的に広がり、加速している大きな動きが、「化石燃料から再生可能エネルギーへのシフト」です。

各国の再エネ目標は?

世界の各国・地域では、どのような再エネ目標を立て、政策・施策を進めているのでしょうか? EUでは、2020年までに再エネの割合を20%にするという目標に向けて、順調に進んでいます。2015年には、電力の26%はすでに再エネ発電となっています。 風力大国デンマークでは、2014年時点で、電力の39%をすでに風力から得ていました。国としての目標は、この割合を2020年までに50%に引き上げること。そしてさらに2035年までには、国内のすべての電力と熱を再生可能エネルギー源から得るというものです。そしてその先があります。2050年までに、最も切り替えが難しいと考えられている輸送エネルギーも含め、すべてのエネルギーを再生可能エネルギーにするというものです。

ドイツは、2013年の時点で、再エネ源からの電力の割合は約25%でした。2025年の目標は、これを少なくても40%に、2050年までには80%にするというものです。 「再エネ大国」としての大躍進が目立つのが中国です。2005年に再エネ法が成立して、第12次5カ年計画では、1次エネルギーの15%を、2020年までに再エネにするという計画を立てています。 インドでも、2014年に、2022年までに175GWという再エネ目標を設定し、2030年までには電力の40%を化石燃料以外によって供給する、という目標を立てています。さらに2016年12月に、インド政府は国家電力計画の草案を発表しました。これによると、現在建設中のもの以降は、石炭火力発電の新規建設は当面見込まないということ。代わりに、100GWの太陽光や風力を開発し、そういった再エネ発電で電力需要の伸びをカバーするという考えです。それによって、再エネ発電量は倍になります。 日本はどうなのでしょうか? 日本の「2030年の電源構成」では、再エネの比率は22~24%です(ちなみに、原子力が20~22%、天然ガス火力が27%、石炭火力が26%、石油火力が3%となっています)。先進国はもちろん、中国やインドなどと比べても、もう少し積極的な目標が掲げられないのか……と思います。

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